妊活に有効な成分として注目されるたんぱく質。体の中でどのような働きをするのか、そして効率的に摂取する方法をお伝えします。

佐藤 蒔 (ジネコスタッフ)
不妊専門クリニックで実際に栄養相談と不妊カウンセリングを担当。これまで1000人以上の妊活相談を実施。日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、日本ダイエット健康協会1級プロフェッショナルアドバイザー、生活アドバイザー、内閣府認可職業技能振興協会サプリメントマイスター、健康食品コーディネーター。
たんぱく質には妊活中に嬉しい働きがいっぱい

前号でも詳しく解説しましたが、もう一度、たんぱく質をしっかり摂ることで妊活に期待できる効果を確認してみましょう!
1.生殖器官・生殖細胞はたんぱく質からできている
生殖器官とは、妊活においてとても大事な卵巣・卵管・子宮のこと。もちろん子宮内膜も大部分がたんぱく質でできています。生殖細胞とは卵子と精子のこと。たんぱく質が不足ぎみだと、このような生命維持に直接的に関係ない機能へ栄養を届けるのは後回しになってしまいます。
2.妊活に必須の血流を生みだす
全身に血液を送りだす心臓と筋肉はたんぱく質からできています。特に日本人女性は筋肉量が少ないので、冷え性になっている方が多いです。 朝ごはんにたんぱく質をしっかり摂ると特別な運動をしなくても筋肉が維持しやすくなるといわれています。また、たんぱく質とビタミンDを一緒に摂ることで、筋肉の強化・肥大まで期待できます。 運動も大事ですが、栄養素を見直すのは妊活にとても効果があります。
3.卵子の質を改善する抗酸化成分を分泌するカギとなる
抗酸化成分は、実は体内で生成されています。若い頃はたくさん分泌されている抗酸化物質ですが、男女ともに40歳前後からガクッと分泌量が減っていきます。体力の衰えや、年齢に抗えない卵子の質低下の一部もこのせいです。 メラトニンなど、体内で生成できる一部の抗酸化物質はアミノ酸がカギとなって分泌されるので、アミノ酸になるたんぱく質を補うのはとても大事なのです。
4.受精卵を受け入れる免疫となる
着床期の子宮内膜では、異物を排除しようとする攻撃性の強い免疫より、受精卵を受け入れる受容型の免疫が多くなります。実はこれらのヘルパーT細胞と呼ばれる免疫もたんぱく質から作られています
5.糖代謝異常を防ぎ、妊娠しにくい体質を改善
多囊胞性卵巣症候群との関連性が指摘されている糖代謝異常。たんぱく質を朝ごはんにしっかり摂ることで1日の血糖値を一定に保ちやすくし、食前に摂ることで急激な血糖値の上昇を抑えます。 このほかにさまざまな面から耐糖能異常になるのを予防し、排卵障害などの原因の1つである多囊胞性卵巣症候群になりにくくします。
6.子どもの将来の知能発達を守る
妊娠初期~妊娠中期に母親のたんぱく質摂取量が少ないと、子どもが3歳前後になった時点で知能発達に遅れが見えることがわかってきました。 たんぱく質は妊娠しやすくなるためだけでなく、子どもの将来を守るためにも大事なのです。
たんぱく質と〇〇を飲み合わせると効果的

それぞれの栄養素は経口摂取したのち、きちんと吸収・代謝をされてようやくそのパワーを発揮します。栄養バランスが崩れるとよくないといわれるのは、吸収・代謝にさまざまな栄養が密接に絡んでいるから。
たとえば、たんぱく質をエネルギーに変えて体の力にする代謝経路では、ビタミンB群やナイアシン、葉酸などいろいろな種類のビタミンが活躍しています。また、妊活に効果があると期待されている亜鉛やビタミンDも実はたんぱく質と併せて摂ることでその効果を発揮しやすくなる栄養素。
妊娠しやすい体づくりにバランスのとれた栄養が大事な理由の1つです。
たんぱく質はこまめに適量を
- たんぱく質は、こまめに摂る
1度に吸収・代謝できるたんぱく質は20g程度です。 - 1日当たり70gが摂取目標
- 糖質や脂質と違い、体に貯蓄できない代謝できない場合は、尿で排出します。
- 摂りすぎは肝臓の負担に
妊活中のたんぱく質は植物由来と動物由来、どちらがいい?

食事で摂るなら大豆などの植物由来、お肉やお魚、乳製品などから摂れる動物由来、両方大事です。
日本人女性は食事をとっていてもたんぱく質の摂取量が最低限の目標値に届いていません。だからこそ、食事では足りないたんぱく質をプロテインで補うのは、妊娠しやすい体づくりにはとてもいいこと。
プロテインで摂る場合、植物性であるソイプロテインより、乳由来であるホエイプロテインがおすすめです。厚生労働省や農林水産省は、妊娠中および妊娠可能性のある女性、つまり妊活中の女性が特定保健用食品から食事に上乗せして大豆イソフラボンを摂取することは控えるよう示しています。この理由は、大豆イソフラボンが過剰な母親の子宮内で、胎児の遺伝子異常が起きやすくなり、小児がんになるリスクが高まるからです。
豆腐や納豆、お味噌やお醤油など食事から大豆イソフラボンを摂ることで健康被害が出ることはないといわれていますが、特定保健用食品だけでなくサプリメントやプロテインなどの健康食品から、敢えてリスクを冒して植物性のプロテインを摂る必要はありません。
くせが少ないため甘味料や香料なども少なめで製造できる妊活用のホエイプロテインだと、安心して飲めるでしょう。
妊活に効果が出やすいたんぱく質の摂り方
- 妊活に効果的に摂りたいなら葉酸やビタミンB群など、マルチビタミンと一緒に摂る
- 肉・魚・乳製品・卵・大豆類の食品を積極的に
- サプリと同じようにプロテインを活用する
- 妊活中はソイプロテインよりホエイプロテインを